「相続について」~遺産相続「遺留分」の計算式と具体的な2つのケース

遺産相続と相続税

皆さん、こんにちは。

前回、遺留分侵害額請求を行うために必要な、対象となる相続人の遺留分割合と、遺留分の基礎となる財産額の計算式、それぞれの説明をお伝えしました。

この二つが分からないと、遺留分が侵害されているのか、ご自分の遺留分がどのくらいあるのか確認することができませんので、覚えておきましょう。

今回は遺留分の計算式と、それを使った具体的なケースをお伝えしていきます。

遺留分の計算式と具体的なケース

「遺留分の割合」「遺留分の基礎となる財産額」が確認できたら、その2つを掛け算すれば、遺留分の金額を算出することができます。

まずは「遺留分の基礎となる財産額」の計算式のおさらいをしましょう。

【相続財産(相続開始日)】+【生前贈与(1年以内)】+【特別受益(10年以内)】-【債務(借金など)】=遺留分の基礎となる財産額

遺留分の計算式は以下の通りです。

遺留分の割合は、法定相続分割合の1/2、もしくは1/3となります。

【遺留分の基礎となる財産額】×【遺留分の割合】=遺留分

遺留分の計算式が分かったら、次は自分の遺留分が侵害されていないか確認しましょう。

相続により受け取った財産が、遺留分より少なく遺留分の侵害にあたる場合は、侵害している相続人に「遺留分侵害額請求」を行なうことができます。

例えば、遺留分が5.000万円だとすると、5.000万円相当のものを相続できているか確認し、受け取れているのであれば、請求できませんし、侵害されているのであれば請求できるということです。

では、よくある具体的なケースをみていきましょう。

遺留分計算の具体的なケース

ケース①【遺留分権利者が配偶者の妻と子ども2人(長男、次男)】

・相続財産額:5.000万円

・「妻に全財産の5.000万円を譲る」と書かれた遺言書がある。

・また、生前贈与や特別受益、債務はないので遺留分の基礎となる財産は5.000万円となる。  【5.000万円】+【生前贈与なし】+【特別受益なし】-【債務なし】=5.000万円(遺留分の基礎となる財産額)

このケースの場合、遺言書の通りにいけば本来、長男と次男は遺産を受け取ることができません。

しかし、長男・次男は遺留分権利者に該当するので、遺留分侵害額請求を行なうことができます。

では、遺留分の計算式にそれぞれあてはめて遺留分がいくらになるか計算してみましょう。

ここでの遺留分の割合は、配偶者の妻(1/4) ・子ども(1/4)となります。しかし子どもは2人なので、遺留分の割合は一人1/8となります。

遺留分の計算式:(遺留分の基礎となる財産額)×(遺留分の割合)=遺留分

妻:(5.000万円×1/4)=1.250万円(遺留分)

子ども一人につき:(5.000万円×1/8)=625万円(遺留分)

このケースで見ると、長男・次男にはそれぞれ、625万円の遺留分があるということが分かりました。「全財産5.000万円を妻に」という遺言書があるので、625万円全額侵害されているため、妻に遺留分侵害額請求を行なうことができます。

ケース②【遺留分権利者が子ども2人(長男・長女)】

・相続財産:9.000万円

・負債:500万円

・特別受益:長女に住宅購入資金のために1.500万円(10年以内)

・「遺産は内縁の妻に6.000万円、長女と次女にそれぞれ1500万円渡すものとする」といった内容の遺言書がある。

このケースの場合、債務と長女への特別受益があるので、それらを加えて、まず遺留分の基礎となる財産を計算し算出する必要があります。

【遺留分の基礎となる財産額】

(相続財産9.000万円)+(特別受益1.500万円)-(負債500万円)=1億円

これにより、遺留分の基礎となる財産額は、1億円ということが分かりました。

では次に、遺留分を計算していきましょう。

今回は子ども2人のみなので、遺留分の割合は一人1/4となります。(※内縁の妻は法律上、配偶者とはみなされません)

【遺留分の算出】

(1億円)×(1/4)=2.500万円(1人につき)

これで、遺留分が1人2.500万円ということが分かりましたね。

ただし、借金は法定相続分通りに相続されるので、子ども2人でそれぞれ250万円ずつ負担します。

これらを踏まえて、遺留分が侵害されていないか確認していきましょう。

長男は、相続で1500万円受け取ってますが、負債500万円のうち250万円負担しなければなりません。

【2.500万円(遺留分)-1.500万円(相続)+250万円(負債)】=1.250万円の遺留分の侵害が確認されました。

よって、長男は内縁の妻に対し、1.250万円の遺留分侵害額請求をすることができます。

一方、長女の場合は特別受益として1.500万円受け取っているため、それを遺留分額から差し引いての計算となります。

【2.500万円(遺留分)-1.500万円(相続)-1.500万円(生前贈与)+250万円(負債)】=マイナス250万円となり、遺留分の2.500万円以上の相続分を受け取っていることが分かりました。

よって、長女は内縁の妻に対して遺留分侵害額請求をすることはできません。

遺留分侵害額請求は早めに行いましょう

遺留分侵害額請求はいつでもできるわけではなく、「相続開始及び、遺留分侵害を知ってから1年以内」「相続開始から10年」と期間が定められています。

この期間内に遺留分侵害額請求を行わなければ、遺留分侵害額請求の権利が消滅してしまいます。

そうならないためにも、ご自分が遺留分権利者であるなら、早めに遺留分が侵害されていないか確認し、侵害されているのであれば遺留分侵害額請求を行うようにしてください。

以上、1年以内にするべき手続き「遺留分侵害額請求」についてお伝えしました。

ご自分の相続分に関して、納得いかないのであれば、遺留分というものがあるということ、それを侵害されていないか、一度確認してみると良いでしょう。

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